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経験則!山での自然観察時における注意点

 

最近では山ガールという言葉ができたように、山登りや動物、植物の自然観察で山を訪れる方が増えています。

 

そういった山での自然観察時には、実は多くの危険が潜んでいます。

 

この記事では、山での生物調査を10年行ってきた僕の経験をもとに、山での自然観察時における注意点をご紹介したいと思います。

 

少し長めですが、実際に山へ赴く前に是非ご一読頂き、改めて危険に対する認識と予防を行ってもらえたらと思います。

 

山での自然観察時における注意点

 

山での自然観察時において、注意すべきポイントは大きく分けて以下の3つです。

 

注意すべきポイント

斜面移動時
危険生物
天候

 

それぞれ解説していきます。

 

斜面移動時

 

まずは、尾根を登っている時や道なき道を登っている時などの斜面を移動している際の注意点について解説します。

 

滑落

 

まず一番危険なことは、滑落ですよね。

 

斜面を滑落すると、生命の危険に直で繋がります。

 

滑落しないためのポイントをご紹介します。

 

三点確保

斜面を移動する際は「三点確保」を意識しましょう。

 

三点確保とは、両足だけでなく、片手も使って三点で身体の体勢を安定させることです。

 

この時大事なことは、空いたもう片方の手はフリーにしておくことです。

 

片方の手がフリーであれば、万が一斜面で滑ってしまったり、足元が崩れてしまったりした際に、周りの木の枝等を掴むことができ、滑落を防止できます。

 

足場を見分ける

斜面を移動する際は足元を良く観察し、危険なところを見分けます。

 

崩壊地や侵食がみられるような場所では、土壌流出により斜面が崩れやすい状態になっています。

 

崩れやすい斜面に出会ったら、そこを横切るのではなく、ある程度土壌がしっかりしていて安定している斜面まで迂回してから通るようにしましょう。

 

物の落下

 

続いて、物の落下に着目してみます。

 

斜面で物を落とすと、下手すれば斜面の一番下まで転がり落ちてしまいます。

 

落とした物によっては生命線を脅かす可能性があり、大変危険です。

 

そのため、物を落とさないための工夫を以下に述べます。

 

物を落とさないための工夫

 

物を落とさないために工夫として、すでに皆さん馴染みの深いグッズであるかと思いますが2点紹介します。

 

ネックストラップ

 

自然観察や生物調査で山に入る場合は、おそらくデジカメ等を持って行っているかと思います。

 

デジカメを斜面から落としてしまったら、壊れるかもしれないし、回収できるかも怪しいですよね。

 

頻繁に使用するデジカメは、ネックストラップで繋いでおきましょう。

 

ネックストラップがあれば、物を落とすリスクを減らせます。

 

カラビナチェーン

 

枝を切るための剪定ばさみや野帳を書くためのペン等は、カラビナチェーンで繋いでおくと安心です。

 

腰に道具入れを巻いて作業をすることもありますが、道具入れとカラビナチェーンで繋いでおくとふとした拍子に物が落ちてしまうことを防げます。

 

草や枝に引っ掛けない

 

物を落とさないために大事なことは、物を草や枝に引っ掛けないことです。

 

以下に工夫ポイントを紹介します

 

身体を半身に

 

草や枝が繁茂して込み入った場所を通る際は、身体を半身の向きにして草や枝と接触する面積を最小限にして通るようにして、物を引っ掛けないようにしましょう。

 

なるべく接触面積を減らすことが肝心なので、草や枝の生え方に合わせて、かがむ等で避けながら半身で移動することがポイントです。

 

流れの向きに身体を合わせる

 

背丈ほどのササが繁茂している場所や細かい枝が密な場所では、それらの植物の生えている方向に身体を合わせながら進みましょう。

 

具体に言うと、ササや枝が生えている方向の力に対して受け流す動きで進むと、抵抗を大きく抑えることができるので、物がひっかかる確率も下げることができます。

 

また、受け流す動きができれば体力的にも余計なエネルギーを消費しないので、疲れにくくなります。

 

枝の跳ね返り

 

枝が横に張り出していたり、込み入っていたりする場所では、通った後の枝の跳ね返りに注意が必要です。

 

枝の跳ね返りは、基本的には複数人で行動している場合においてリスクが生じます。

 

前の人と距離をとる

 

前の人が通った後に枝が跳ね返り、後ろの人に枝が当たることがあります。

 

これは、自動車の車間距離と同じように、前の人との距離をある程度長めに取っていれば防げます。

 

自分は気を付けていても、後ろの人が距離を詰めすぎてしまうこともあるため、お互いに声を掛け合い、意識することが大事です。

 

枝を手で押さえる

 

いくら十分な距離離れていたとしても、跳ね返った際に枝が折れて飛んだりする可能性もゼロではないので、通る際にたわんだ枝を手で押さえながら元に戻しましょう。

 

跳ね返る衝撃を手で押さえながら戻すことにより、限りなくゼロへ抑えることができますので、有効な対策です。

 

危険生物

山といえば危険生物たちの巣窟でもあります。

 

とはいえ、生物たちにとっては生存のための防衛本能や繁殖のための行動だったりするので、危険生物という表現はあくまで人間の立ち位置からでのものです。

 

ここでは危険生物に対する対処法を紹介しましょう。

 

スズメバチ類

 

日本において、スズメバチ類は13種程度生息しています。

 

スズメバチ類には、程度の差はあれど強力な毒があります。

 

僕自身、3回ほど山でスズメバチに刺された経験があり、二度と刺されたくないので、対策には常に細心の注意を払っています。

 

<スズメバチ類の対処法>

 

巣に近づかない

 

当たり前ですが、スズメバチ類は人が巣に近づくと防衛本能で人を刺します

 

巣は樹上にあったり、土の中にあったり、葉の裏にあったりと様々で、一見して巣があるように見えないことも多々あります。

 

しかし、必ず巣があるヒントをスズメバチ類は出してくれます。

 

威嚇行動を見逃さない

 

人が巣に近づくとスズメバチ類は

 

威嚇行動

・相手の周りをしつこく飛びまわる
・アゴを噛み合わせて「カチカチ」という音を出す

 

といった威嚇行動をとってくれます。

 

このサインを見逃さないようにし、威嚇を確認したら速やかにその場から立ち去りましょう。

 

※ちなみに自分がスズメバチ類に刺されたのも、全て巣に近づいた時です。とほほ

 

ヤマビル

 

山において、そのルックスもさることながら、噛まれた後に血まみれになるというホラー映画さながらの地獄絵図を提供してくれるヤマビルは、危険生物の代表格です。

 

ヤマビルは吸血の際に、痛みをなくし、血液の凝固を妨げる「ヒルジン」という物質を出すため、本人は吸血されていることに気づかず、傷跡からダラダラと出血が続きます。

 

傷口から細菌類による感染を起こし、二次感染等を引き起こす可能性もあるので、ヤマビルに噛まれないよう対策をしましょう。

 

<ヤマビルの対処法>

 

すき間をなくす

 

ヤマビルは身体が柔らかく、細く伸びることができるため、わずかなすき間があれば服の間から侵入して、地肌にたどり着いてしまいます。

 

ヤマビルは大抵地表にいるので、足元から侵入されて被害に遭うパターンがほとんどです。

 

そのため、ズボンの裾を靴下の中に入れてすき間ができないようにしましょう

 

僕なんかの場合では、裾を靴下に入れただけでは対処しきれないことが多いのを知っているので、ズボンの上にヤッケやカッパを履き、長靴とヤッケやカッパの裾のすき間をガムテープでぐるぐる巻きにして密閉します。

 

これをやっておけばほとんどやられることはなくなります。

 

定期的な足元チェック

 

すき間をなくす対処法をお伝えしましたが、とはいえ足元から上にヤマビルは登ってくるので(これを防ぐのは不可能)、定期的に足元を確認することが大事です。

 

登ってきているヤマビルを見つけたら、上へ移動する際の吸盤が離れる瞬間にデコピンをして弾き落としましょう。

 

結局のところ、定期的に弾き落としていれば噛まれる確率はかなり低くすることができます。

 

ちなみに、「昼下がりのジョニー」はマジでヤマビルに有効です。

 

 

マダニ

 

普段はシカや野ネズミを吸血し、産卵して次世代へという生活環を持つマダニですが、近年マダニを媒介とした重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者数が増加傾向にあります。

 

SFTSを発症すると、最悪に場合、死に至ります。

 

マダニ自体が非常に小さく、平たくて見つけづらいので厄介です。

 

そんなマダニの対処法を紹介します。

 

<マダニの対処法>

 

肌の露出を最小限にする

 

ヤマビル同様、マダニが吸血するためには地肌に到達する必要があります。

 

そのため、手首や足首の裾を手袋や靴下の中に入れて、すき間をなくすことが有効です。

 

また、首元もタオルなどを巻いておくと露出が抑えられます。

 

ちなみに僕はマダニには噛まれたことはないです。どや

 

動物の通り道や藪を通った際はすぐに全身チェック

 

マダニはシカやタヌキ等の哺乳類からの吸血を主としています。

 

そのため、けもの道や藪の葉の先端で動物に付着するのを今か今かと待ち構えています。

 

そのため、そういった場所を通った際は高確率でマダニが付着しているので、すぐに全身チェックをしましょう。

 

付着しているマダニを見つけたら、デコピンで弾き飛ばしましょう。

 

毛虫

 

チャドクガやドクガ等の幼虫は、毒針毛と呼ばれる毛を持つ毛虫です。

 

毛虫は基本的に食草となる樹種に依存しています。

 

毛虫の毒針毛に刺されると、しつこい皮膚炎を発症します。

 

結構症状が長引くので、厄介です。

 

山に入った後、原因不明の皮膚炎が続いた場合は知らぬ間に毛虫の毛にやられていることも多いです。

 

毛虫の対処法をご紹介しましょう。

 

<毛虫の対処法>

 

藪を通らない

 

毛虫は食草となる木の葉っぱに付いています。

 

そのため、藪を通った際に毛虫に触れてしまい、被害に遭うことが多いです。

 

無理に通る必要がないなら、藪を避けるようにしましょう。

 

腕をまくらない

 

これは他の危険生物への対処法でもありますが、暑いからといって腕めくりをしたまま藪や植物が密生した場所を通ることは自殺行為に近いです。

 

しっかり長袖を着ていれば、多少藪を漕いでも毛虫の被害に遭うことは少なくなります。

 

ヤマウルシ

 

山に生えている植物の中にも毒性を持つものがいます。

 

その代表格がヤマウルシです。

 

ヤマウルシの樹液に含まれるウルシオールという物質がアレルギー性の皮膚炎を引き起こす可能性があります。

 

ヤマウルシの枝を折ったり、葉をちぎったりしたときに出る白い樹液に触れると終わりです。完全にオワタです。

 

対処法を紹介します。

 

<ヤマウルシの対処法>

 

とにかく近寄らない

 

ヤマウルシの対処法はシンプルです。

 

とにかく近寄らないようにしましょう。笑

 

幸いにして、ヤマウルシは葉軸が赤くて比較的見分けやすいので、見つけたら引くぐらい距離をとりましょう。

 

私の友人は、ヤマウルシに1mまで近づいただけで軽い皮膚の炎症を引き起こしていました。

 

僕自身もヤマウルシによる皮膚炎は経験ありますが、これまた毛虫と同様に結構長引きます。つらいです。

 

イノシシ・ツキノワグマ

 

ニュースでたまに聞きますよね、イノシシやツキノワグマによる被害。

 

その鋭い牙や爪による裂傷などで、中には運悪く死亡に繋がってしまうケースもあります。

 

彼らも生きるための防衛本能だったりするので、致し方ないというところではあります。

 

ここでは、そんな彼らに出会わないようにする対処法をお教えします。

 

<イノシシ・ツキノワグマの対処法>

 

音を鳴らして歩く

 

野生動物は音に敏感です。

 

歌を歌ったり、鈴の音を鳴らしたりしながら歩けば、音に気づいた動物たちは大抵逃避行動を行います。

 

稀に子熊などは好奇心旺盛なので、「なんか音聞こえる。なんだろ?」的な感じで近づいてきたりすることがありますが、基本的には逃げていきます。

(子熊が来ると親熊も近くにいるのでオワタになる可能性高しです)

 

特に一人で山にいるときは、黙々と登ってしまってイノシシやツキノワグマとばったり遭遇ということもありますので、好きな歌などを歌いながら歩くようにしましょう。
(これはこれで人も近づいてこなくなるかも笑)

 

遭遇してもすぐに逃げない

 

万が一、イノシシやツキノワグマに遭遇しても、すぐに背を向けて逃げようとしないでください。

 

背を向けて逃げると、彼らは弱みを見せた相手を追撃しようとします。

 

ばったり出くわしてしまったときは、大きな音を出すようにしながらじりじりと後退していきましょう。

 

木の棒等で樹木の幹を叩いて大きな音を出すのが有効です。

 

実際僕も、雨の日の山奥の山頂付近で、乙事主(おっことぬし)のようなめちゃでかいイノシシに出会ったことがあります。

 

大きなけたたましい鳴き声をあげて威嚇してきましたが、逃げたらやられると分かっていたので、他の2人とともに大きな声を出したり、物で樹木を叩いて音を出したりして、「負けないぞ!」という意思を表明したところ、のっそのっそと去っていきました。

 

しっかし、あの牙で突進されたら死ぬなと本気で感じ、怖かったです。

 

 

天候

 

最後に天候について解説します。

 

山の天気はコロコロ変わる

 

山の天気は天気予報どおりとはいかず、コロコロ変わります。

 

それはもうまるで乙女心のようにコロコロと…おっと誰か来たようだ

 

山の天気が変わりやすいのは、複雑な地形によって空気が上昇する場所と下降する場所が多く発生し、雲の発生と消滅が繰り返されるため、平地より変化しやすいからです。

 

当たり前ですが、雨が降ると斜面で滑りやすくなるため、滑落のリスクが上がります。

 

そのため、天気はすぐに変わるものだという認識で、定期的に空を見上げて雨雲の有無を確認しながらスケジュールを組んでいきましょう。

 

気温に注意

 

これまた当たり前ですが、標高が高ければ高いほど、気温は下がります

 

大体1000mで気温は6.5℃程度下がると言われています。

 

つまり、標高が高いところでは、夏場であっても予想以上に気温が低くなることがあるため、フリースやジャンパー等の寒さ対策グッズはリュックに忍ばせておくと良いです。

 

また、夏場の低山地での調査等では、林内や尾根道において風の通りが悪く、無風状態のことも多いため、予想以上に暑く感じることがあります。

 

そういったときに熱中症にならぬよう、十分な水分を持参し、こまめな水分補給を意識しましょう。

 

さいごに

 

いかがでしたでしょうか。

 

山での調査や自然観察時における注意点について紹介しました。

 

この記事で紹介した内容は、どれも一歩山に入れば痛感するようなことばかりだと思います。

 

次に山に入る際は、ぜひこの記事で紹介した内容を頭に入れ、様々な対処や予防を行いながら楽しんでもらえればと思います。

 

ではまた。

 

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