生き物が好き!という方の中でも、ペットとして親しまれている犬や猫が含まれる哺乳類が一番好きな方も多いと思います。
しかし、日常生活において、野生の哺乳類に出会うことって意外と少ないですよね。
なぜなら彼らは非常に頭が良く、人に敏感で警戒心が強いからです。
この記事では、ちょっとマニアックですが哺乳類調査をする際の動物を見つけ出すポイントをご紹介します。
哺乳類調査のポイント
一般的に哺乳類調査で用いられる調査手法には、以下のようなものがあります。
哺乳類調査の手法
フィールドサイン法
トラップ法
無人撮影法
夜間調査
それぞれ調査手法の解説とポイントをご紹介します。
フィールドサイン法
フィールドサイン法とは、湿地や砂地などの水際や樹林地等の動物が生息する場所を踏査し、足跡、糞、食痕、巣、爪痕、抜毛、掘り返し等のフィールドサイン(痕跡)を確認し、種類、位置、確認状況等を記録する手法です。
もちろん、動物を目撃した場合も記録します。(正確には目撃法という手法ですが)
フィールドサイン法を実施する際のポイントをご紹介します。
休息場所を推測する
フィールドサインを探す際に大事なことは、休息場所を推測することです。
自分が動物だったらどこで休息するか、という視点です。
例えば、我々人間だと休憩する場所って平坦で周辺が開けているような場所を選ぶことが多いですよね。
動物も案外同じだったりします。
もちろん人間と違って小型~中型哺乳類は天敵に狙われるリスクがあるので、開けている場所という広さのレベルが全然違うのですが。
斜面かつ藪で1m先が見通せないような場所で休息すると、知らぬ間に天敵に近づかれてしまうリスクがありますよね。
そういった意味で、平坦で少し開けている場所は、天敵が近づいてもある程度距離があり、逃走するという選択肢が取りやすいので休息に適しています。
休息場所には、糞、足跡、食痕などのフィールドサインが残されていることが多いです。
動物目線で休息する場所を推測することがポイントです。
通り道を推測する
フィールドサインを探す際に大事なことは、動物の通り道を推測することです。
先ほどの休息場所と同じですが、人間も動物も通りやすい道を通るものです。
哺乳類調査に慣れると、斜面に「けもの道」と呼ばれるホンドジカやイノシシ等の通り道がつづら折りになって下から上へ続いていることに簡単に気付けるようになります。
けもの道は、その合理的な歩きやすさから人間が斜面を登る際にも通り道として選択すると登りやすかったりします。
草原や藪の中にも、よく見るとトンネル状になっているホンドタヌキ等のケモノ道があります。
こういったけもの道には、移動中に小休憩を行った際に排便された糞であったり、道すがら食べたであろう食痕、足跡等のフィールドサインが残されていることが多いです。
周辺状況をよく見て動物の通り道を推測することがポイントです。
残り香や小さな違和感に気づく
フィールドサインを探す際に大事なことは、動物の残り香や小さな違和感に気づくことです。
動物は、その野性味あふれる生活から獣臭を放っていることが多いです。
山を歩いていて獣臭がする場面に出会った経験が皆さんもあるのではないでしょうか。
動物がその場を去っても、獣臭は一定時間その場に残ります。
また、フィールドサインは必ずしもそんなに目立つものではありません。
特に小型~中型動物のフィールドサインはすごく小さくて目立たないものも多いです。
周辺の状況を見渡したときに、わずかながら残る違和感に気づくことが肝心です。
例えば、立派な樹洞を持つ大径木がある樹林や御神木があるような神社の裏の樹林には、ムササビが生息していることがあります。
ムササビの糞は丸くて小さい形をしています。
そういったところで地面をパッと見ると、木の実や殻、落葉落枝によって紛れがちですが、ムササビの糞が落ちています。
樹木の下を集中的に見ていき、「これは木の実とかではないな」という違和感に気づける目線を持てば、フィールドサインを見つけやすくなります。
(ムササビの糞には特有な臭いもあるので、そういった面でも識別できますが)
つまり、嗅覚や視覚をフルに利用してわずかな違和感に気づくことがポイントです。
トラップ法
目撃やフィールドサインによる確認が難しいネズミ類やモグラ類の確認は、トラップ法による捕獲確認を用います。
シャーマントラップ
シャーマントラップは、ネズミ類やヒミズ等を生け捕りするための折り畳み式の箱型トラップです。
素材がアルミニウムでできているため、軽量で持ち運びしやすいのが特徴です。
トラップ内にネズミ類が好むピーナッツやサラミといった餌を入れて設置し、餌に誘引されたネズミ類がトラップ内に入るとふたが閉まる仕掛けになっています。
シャーマントラップを仕掛ける際に重要なポイントを紹介します。
障害物沿いに仕掛ける
斜面の法尻や倒木といった障害物沿いや傾斜地形沿いにシャーマントラップを仕掛けると有効です。
人間でもそうですが、だだっ広い道の真ん中を歩くより、片側に壁がある方が歩きやすかったりしますよね。
また、障害物で片側が塞がれていれば、必然的にその障害物沿いに進んでいくしかないですよね。
それはネズミ類にとっても同じことなので、そのような障害物沿いや傾斜地形沿いにトラップを仕掛けると捕獲しやすいです。
少し傾斜があるところに仕掛ける
ネズミ類の習性を利用し、わずかに傾斜があるところにシャーマントラップを仕掛けると有効です。
回し車で走っているハムスターを一度は見たことあるかと思います。
ネズミ類は傾斜があると上へ登ろうとする習性があります。
その習性を利用し、少し傾斜があるところにトラップの入口が斜面下に向くようにトラップを設置すると、捕獲できる確率が上がります。
モールトラップ
モールトラップは、モグラ類を生け捕りするための筒状のトラップです。
トラップ内にモグラ類の好物であるミミズを餌として入れ、モグラ類が良く通る坑道に設置し、モグラ類が坑道を通過あるいはミミズを捕食する際に捕獲します。
筒状のトラップ内に入ると、内側に返しが付いているため、一度入ったら出られない仕組みとなっています。
モールトラップを仕掛ける際に重要なポイントを紹介します。
新しい塚の近くに仕掛ける
モグラ類が使用する坑道は無数にあります。
そのため、モールトラップで捕獲するにはなるべく直近で使用している坑道に設置することが重要です。
比較的新しいモグラ塚がある場所周辺の坑道は直近で使用されている可能性が高いので、そういったところを狙って仕掛けるのが大事です。
坑道を極力壊さないように仕掛ける
モールトラップは坑道に設置しますが、設置する際に坑道を大部分崩してしまうと、モグラ類もそれに気づきますし、警戒します。
そのため、トラップ設置の際は極力トラップが収まる最小範囲部分のみをいじるようにし、なるべくスムーズにモグラ類が坑道を通れるように意識することが肝心です。
無人撮影法
無人撮影法とは、主に夜行性の哺乳類を確認するために、センサー検知で反応する無人カメラの撮影により動物を確認する手法です。
無人カメラは、哺乳類が頻繁に往来しているような「けもの道」あるいは小径、水際に設置し、カメラの視野内に魚肉ソーセージ等の餌を置くことで餌による誘引も行います。
無人撮影法を実施する際のポイントをご紹介します。
動物の目線を意識する
無人カメラで動物を撮影するためには、動物の目線を意識することが重要です。
具体的に言うと、どういった哺乳類を狙うかでカメラの画角は変わってきます。
なぜなら、撮影したい角度は動物の顔がしっかり写って、存在の証拠として有効な写真を撮れる角度だからです。
例えば、ホンドジカやカモシカ等の大型哺乳類を狙う場合は、彼らの目線の高さに合わせて画角設定するため、カメラの設置位置も高くなります。
キツネやホンドタヌキ等の中型哺乳類を狙う場合は、地表から1m程度の少し低めの画角設定となります。
ホンドイタチや二ホンリス等の小型哺乳類を狙う場合は、地表から50㎝程度の低い画角設定がベストとなるでしょう。
カメラの画角を確認する際に、動物の目線でカメラのレンズを見て、微調整することがポイントです。
交差路が狙い目
無人カメラの設置位置は、けもの道や小径の交差路が狙い目です。
なぜかというと、交差路は動物がどのルートを通っても必ず通る場所なので、撮影の可能性が大きく上がるからです。
けもの道を見つけたら、少し辿っていき、交差路を見つけましょう。
交差路際にある樹木の幹等に設置すると有効だと思います。
動線上には設置しない
気を付けてほしいのが、無人カメラを動物の動線上には設置しないということです。
理由はシンプルで、動物に蹴飛ばされたり、遊ばれたりしてカメラを付けた三脚ごと倒れてしまう危険があるからです。
また、倒されないにしても、動線上に物があると邪魔ですし、警戒されるので、踵を返して別のルートを通ってしまう可能性が高くなります。
動線上にカメラは設置しない、を徹底しましょう。
夜間調査
夜間調査は、日中は確認しづらい夜行性の哺乳類を直接目視で観察する目視観察と、日没前後から活動するコウモリ類を確認するためにバットディテクターでコウモリ類の発する超音波を識別する手法があります。
目視観察
夜間の目視観察は、懐中電灯を使用して動物の目視確認に努めます。
ポイントを以下に解説します。
目の光を見逃さない
懐中電灯で照らすと、動物の目が明るく光ります。
この光を見逃さないことが大事です。
懐中電灯で照らした直後は「なんだなんだ!?」という感じでこちらをジッと見てることが多いので、そのうちに種を識別し、記録しましょう。
木の上に注目
木の上では、二ホンリスやムササビ、モモンガ等が活発に活動しています。
また、ハクビシンは木の上で休息することも多いです。
懐中電灯で木の上を照らすことで、これらの樹上を好む動物の目が光り、存在を確認できることがありますので、木の上にも気を配りましょう。
バットディテクター
バットディテクターは、コウモリ類の発する超音波を識別し、ある程度種の同定が可能です。
ポイントを以下に解説します。
住宅の近くではやらない
バットディテクターはコウモリ類の発する超音波を受信して識別する装置なので、住宅の近くで使用すると、テレビやラジオ等の電化製品の発する超音波を受信してしまい、コウモリ類の超音波を上手く拾えなくなってしまいます。
そのため、住宅の近くでのバットディテクターの使用はやめましょう。
樹林、洞窟、橋梁の近くで試す
コウモリ類には、我々が良く見るアブラコウモリ以外に、テングコウモリやモリアブラコウモリ等の樹林内の樹洞をねぐらとする樹洞性のタイプ、キクガシラコウモリやモモジロコウモリ等の洞窟をねぐらとする洞穴性のタイプが存在します。
また、近年は人間の開発行為による樹林地の減少等の影響もあり、古く使われていないトンネルや橋梁の下などもねぐらとして利用されています。
そのため、バットディテクターを使用する際は、山地の樹林近くや洞窟の近く、古いトンネルや橋梁の近くで実施すると効果的です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
改めて哺乳類調査のポイントは以下の通りです。
フィールドサイン法のポイント
休息場所を推測する
通り道を推測する
残り香や小さな違和感に気づく
トラップ法のポイント
<シャーマントラップ>
障害物沿いに仕掛ける
少し傾斜があるところに仕掛ける
<モールトラップ>
新しい塚の近くに仕掛ける
坑道を極力壊さないように仕掛ける
無人撮影法のポイント
動物の目線を意識する
交差路が狙い目
動線上には設置しない
夜間調査のポイント
<目視観察>
目の光を見逃さない
木の上に注目
<バットディテクター>
住宅の近くではやらない
樹林、洞窟、橋梁の近くで試す
この記事を機に、次回の調査やフィールドに出る際、上記のことを意識してトライしてみてください。
きっと多くの動物たちに出逢えるでしょう。
※生物調査に興味ある方は以下の記事もご参考くださいませ。