当ブログでは、自然環境分野の技術者として生きる道についてコミットして発信しております。
自然環境には大気質、騒音、水質、底質、景観、自然と人との触れ合いの場、動物、植物、生態系などの項目があります。
当然、事業の実施が自然環境へ与える影響を予測、評価する際は、上記の各項目についてどういった影響があるのか調べる必要があります。
この記事では、自然環境分野で働く上で常に関わる環境アセスメントについて、分かりやすくまとめてご紹介します。
環境アセスメントとは?
環境アセスメントとは、環境影響評価法という法律で定められた手続きのことです。
具体的には・・・
道路やダム等の開発といった大規模公共事業や風力発電所や太陽光発電所等の開発といった大規模民間事業において、
その事業実施が環境へ与える影響について事業者自らが調査・予測・評価を行い、
その結果を公表して地元住民や自治体の意見を聞き、環境保全の観点から事業計画を最適なものへと作り上げていこう
というものです。
環境アセスメントの対象事業は、その種類や規模によって第1種事業か第2種事業かに分かれます。
第1種事業と第2種事業の違いは以下の通りです。
第1種事業 | 必ず環境アセスメントを行う事業
例:高速道路、新幹線鉄道、その他大規模開発 |
第2種事業 | 環境アセスメントが必要かどうかを個別に判断する事業
例:出力7,500kW~1万kWの風力発電所、面積40ha~50haの埋立て |
対象事業について詳しく見たい方は環境省の環境アセスメント制度のページをご確認ください。
環境アセスメントの手続きの流れ
環境アセスメントの手続きの流れは以下のようになります。
環境アセスメントの手続きの流れ
- 配慮書
- スクリーニング
- 方法書
- スコーピング
- 環境アセスメント
- 準備書
- 評価書
- 報告書
各手続きについて説明します。
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1配慮書
配慮書とは、第1種事業を実施しようとする者が、事業の位置・規模等の検討段階から環境に配慮した計画となるように、事業の実施が想定される地域の自然的状況や社会的状況を既往文献や専門家へのヒアリング等を通してとりまとめた図書です。
第2種事業を実施しようとする者は、配慮書の手続きを任意で実施できます。
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2スクリーニング
スクリーニングとは、第2種事業に該当する開発事業について、環境アセスメントを行うかどうかを決める手続きのことです。
環境アセスメントを行うかはその開発事業の規模によってのみ決まるものではなく、規模が小さくても希少性の高い環境を改変する可能性がある場合、環境への影響がクリティカルなため、環境アセスメントの対象となります。
アセス実施の判定は、事業の免許等を行う者(道路は国土交通大臣、発電所は経済産業大臣など)が判定基準にしたがって行います。
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3方法書
方法書とは、対象事業の目的及び内容、事業の実施区域及びその周囲の概況について記載し、事業実施に係る環境影響評価の項目並びに調査・予測・評価の手法をとりまとめた図書です。
方法書は、事業実施区域の都道府県知事や市町村長に送付の上、地域住民等への説明会と併せて、1か月間の縦覧(だれでも閲覧できる)期間を設け、地域住民や地方公共団体等の意見を聴きます。
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4スコーピング
スコーピングとは、方法書の説明会や縦覧にて得られた環境大臣、地域住民、地方公共団体等の意見を踏まえ、方法書に反映させて環境アセスメント方法の決定を行うまでの一連の手続きのことです。
スコーピングの中で、地域特性に応じた適切な調査・予測・評価手法が選定されます。
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5環境アセスメント
スコーピングの手続き終了後、事業者は選定された項目や手法に基づき、調査・予測・評価を実施します。
事業実施の環境へ与える影響を予測、評価するとともに、環境保全のための対策を検討し、対策を実施した場合の環境影響を総合的に評価します。
このブログでもコミットしている生物調査はこの場面に関わる仕事となります。
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6準備書
準備書は、調査・予測・評価・環境保全対策の検討結果を示し、環境保全に関する事業者自らの考え方をとりまとめた図書です。
準備書は方法書同様、事業実施区域の都道府県知事や市町村長に送付の上、地域住民等への説明会と併せて、1か月間の縦覧(だれでも閲覧できる)期間を設け、地域住民や地方公共団体等の意見を聴きます。
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7評価書
評価書は、準備書の説明会や縦覧にて得られた環境大臣、地域住民、地方公共団体等の意見を踏まえ、準備書に反映させて見直した図書です。
評価書は免許等を行う者等と環境大臣に送付の上、意見・助言を反映させて補正したのち、事業者のウェブサイト等で1か月間の縦覧期間を設けます。
この縦覧期間が終われば環境影響評価法が定める環境アセスメントの手続きは終了です。
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8報告書
報告書は、評価書の手続きが終わり、工事着工の後でも、工事中や供用後の環境影響の実態を把握するために事後調査を行い、その結果及び評価をとりまとめた図書です。
評価書で定めた環境保全対策の実施状況とその効果について、工事終了後にとりまとめて報告書を作成し、免許等を行う者等と環境大臣に送付の上、意見を聴きます。
併せて事業者のウェブサイト等で報告書やその概要を公表することがCSR(企業の社会的責任)の観点からも重要です。
まとめ
環境アセスメントについて、少し理解が深まったのではないでしょうか。
自然環境分野に限らずですが、業務対応に当たる際に大事なことは、必ずその業務の目的を意識して調査を行うことです。
生物が好きだからといって、自分の好みの生物だけに注力して見るのではなく、そのエリアに生息・生育する可能性のある動植物を満遍なく網羅できるように調査を行うこと、水環境への影響、近隣住民への影響、
生態系の影響等の総合的な目線で情報を取得していく必要があります。
自然環境調査をやってみたいと思った方は下の記事をご一読頂き、どういった職業に就けば自然環境調査ができるかについて理解を深めて頂ければと思います。